GLOSSARY
用語集
記事に登場する専門用語の解説 (43 項目)。 各記事中の点線下線の用語をクリックすると、ここに飛びます。
研究デザイン (6)
- in vitro
- 「試験管の中で」という意味のラテン語。培養した細胞などを使って試験管・シャーレ上で行う実験。ヒトの体の中で同じことが起きるとは限らない点に注意が必要。
- in vivo
- 「生きた体の中で」という意味のラテン語。実験動物やヒトの体内で行う実験。試験管内 (in vitro) より現実に近いが、それでもヒトと動物では結果が異なることがある。
- RCTRandomized Controlled Trial
- 「ランダム化比較試験」。参加者をくじ引きのようにランダムに 2 つのグループに分け、片方には介入を、もう片方には介入なし (またはプラセボ) を与えて結果を比べる試験。条件をそろえやすく、「本当にその介入が効いたのか」を最も確実に確かめられる方法とされる。
- クロスオーバー試験
- 1 人の参加者が、期間を分けて両方のグループ (介入と対照) を経験する試験デザイン。同じ人で比較できるため、人による個人差の影響を取り除きやすく、少人数でも結果が出やすい。
- コホート研究
- 特定の集団 (コホート) を何年も追いかけて、生活習慣や検査値と病気・死亡などの関係を観察する研究。介入はしないので「相関は分かるが因果関係を確証しきれない」という限界はあるが、長期の傾向を知るのに向く。
- メタアナリシス
- 似たテーマの複数の研究結果を、統計的にまとめ直して 1 つの結論を出す手法。1 件の研究では人数が少なくて見えにくい効果も、たくさんの研究を合わせると見えてくる。エビデンス (科学的根拠) の中で最も信頼性の高いタイプとされる。
分子・細胞 (8)
- AMPKAMP-activated Protein Kinase
- 細胞内のエネルギーが不足したときに働く「省エネモードのスイッチ」。脂肪の分解を促し、mTOR とは反対に老化を抑える方向に働くとされる。運動や空腹、メトホルミンで活性化する。
- HSPHeat Shock Protein
- 熱や酸化ストレスにさらされたときに細胞が増産する、いわば「修理職人タンパク質」。傷んだタンパク質を元の形に戻す働きをする。サウナや軽い熱負荷で増えることが、サウナ習慣による健康寿命への効果の機序候補とされる。
- mTORmechanistic Target Of Rapamycin
- 細胞の「成長・タンパク質合成のスイッチ」となる重要なタンパク質。栄養や運動の刺激で活性化される。常に活性が高すぎると老化を進めるとされ、抑えると寿命が延びることが動物実験で示されている (ラパマイシンが代表的な抑制薬)。
- NAD+Nicotinamide Adenine Dinucleotide
- 細胞のエネルギー代謝や DNA 修復に必須の補酵素。加齢で組織内の量が大きく低下することが分かっており、これを補うことが抗老化研究の大きなテーマになっている (NMN や NR がその前駆体)。
- ROSReactive Oxygen Species
- 活性酸素種。細胞が代謝活動をするときに自然にできる、反応性の高い分子。多すぎると DNA や脂質を傷つけるが、少量はシグナル分子としても働くため、単純に「悪玉」とは言えない。
- オートファジー
- 細胞が自分の中の古くなった部品 (傷んだミトコンドリアや凝集タンパク質など) を分解してリサイクルする仕組み。「細胞の掃除機能」と例えられる。加齢で活性が下がり、神経変性疾患などとの関連が注目されている。
- サーチュインSirtuins (SIRT1-7)
- 「長寿遺伝子」とも呼ばれる酵素のファミリー。NAD+ を消費しながら DNA 修復・代謝・ストレス応答に関わる。動物モデルで活性を高めると寿命が延びる例が報告されている。
- マイトファジー
- オートファジー (細胞内のリサイクル) のうち、特に傷んだミトコンドリアだけを選んで分解するもの。ウロリチン A などが誘導することが報告されている。
生理学 (6)
- METsMetabolic Equivalents
- 運動の強度を表す単位。安静で座っている状態を 1 とし、ゆっくり歩きが約 2、ランニングが 7〜10 程度。「自分が今どのくらい激しい運動をしているか」をざっくり数値化できる。
- VO2maxMaximal Oxygen Uptake
- 運動中に体が取り込める酸素の最大量 (ml/kg/min)。心肺持久力 (心臓と肺の体力) の客観的な物差し。VO2max の低さは、喫煙や糖尿病より強く全死亡リスクと関連するという報告がある。
- インスリン感受性
- 「インスリンの効きやすさ」。同じインスリン量で細胞が糖をしっかり取り込めれば感受性が高い、取り込めなければ低い (= インスリン抵抗性)。低下すると 2 型糖尿病やメタボリック症候群につながる。運動や TRF で改善する。
- グリンパティック系
- 脳の中で「老廃物 (アミロイド β など) を洗い流す排水システム」。睡眠中に活発に動くことが動物実験で示されており、睡眠不足が認知症リスクと関連する一因と考えられている。
- サーカディアンリズム
- 「概日 (がいじつ) リズム」。約 24 時間の周期で体温・ホルモン・代謝が変動する、体内時計の働き。光と食事のタイミングが、この時計を合わせる主要な信号。
- サルコペニア
- 加齢に伴って筋肉量と筋力が減っていく現象。30 歳以降、対策しないと年に 1〜2% の筋量が失われるとされる。転倒・骨折・寝たきりの原因になり、レジスタンストレーニング (筋トレ) で予防できる。
介入 (2)
- HIITHigh-Intensity Interval Training
- 高強度の運動と短い休息を交互に繰り返すトレーニング。短時間で VO2max やミトコンドリア機能を強く改善できることが示されており、時間効率の良い「健康寿命を延ばす介入」とされる。
- TRFTime-Restricted Feeding
- 1 日の食事を一定の時間帯 (例: 朝 8 時〜夕方 16 時など 8〜10 時間) に制限する食事法。総カロリーを変えなくても代謝指標が改善する例が小規模 RCT で報告されている。「16:8 ダイエット」として知られる。
バイオマーカー (9)
- 25(OH)D25-Hydroxyvitamin D
- ビタミン D 充足度をみる血液検査の指標。一般に 20 ng/mL 未満で「欠乏」、30 ng/mL 以上で「充足」とされる (基準は学会・国による)。
- ApoBApolipoprotein B
- 動脈硬化を起こしうるリポタンパク (LDL・VLDL・Lp(a) 等) の表面に必ず 1 個ついているタンパク。これを測ると「動脈に詰まりうる粒子の数」が直接わかるため、LDL-C より心血管リスクの予測精度が高いとされる。
- HbA1cHemoglobin A1c
- 過去 1〜2 か月分の平均血糖を反映する指標。糖尿病の診断・管理の中心。直前の食事に左右されないので、空腹時血糖より長期傾向がわかる。
- HOMA-IRHomeostasis Model Assessment of Insulin Resistance
- 「インスリンの効きにくさ」を、空腹時の血糖値とインスリン値から計算する簡便な指標。一般的に 2.0 を超えるとインスリン抵抗性ありとされることが多い。
- LDL-CLow-Density Lipoprotein Cholesterol
- いわゆる「悪玉コレステロール」。動脈硬化との関連で長く使われてきた指標だが、後述の ApoB の方が予測精度が高いとする見方もある。
- Lp(a)Lipoprotein (a)
- LDL に似た、特殊なリポタンパク粒子。値はほぼ完全に遺伝で決まり、生活習慣で大きくは下がらない。心血管疾患・大動脈弁狭窄症の独立リスク因子で、生涯に一度測定が推奨される。
- TGTriglyceride
- 中性脂肪。エネルギーとして体に貯蔵される脂質で、血中濃度が高いと心血管疾患・膵炎のリスクが上がる。
- TIRTime In Range
- CGM データのうち、血糖値が目標範囲 (例: 70〜140 mg/dL) に収まっていた時間の割合。健常者の代謝健康度の指標としても使われ、90% 以上が目安とされる。
- エピジェネティック時計
- DNA そのものではなく、DNA に付くメチル化マークの分布から「生物学的年齢」を推定する数理モデル。GrimAge は寿命予測、DunedinPACE は老化のスピードを測る代表例。
検査 (4)
- 1RMOne-Repetition Maximum
- ある種目で「1 回だけ持ち上げられる最大重量」。筋トレの強度を表す基準として、〇% 1RM のように使われる。
- CGMContinuous Glucose Monitoring
- 「連続血糖測定」。皮下にセンサーを刺して数分おきに血糖を測り続ける小型デバイス (FreeStyle Libre 等)。糖尿病の管理だけでなく、健常者が「自分の食事と血糖の関係」を可視化するためにも使われる。
- CPXCardiopulmonary Exercise Testing
- 心肺運動負荷試験。トレッドミルや自転車で徐々に運動強度を上げながら、呼気のガスと心電図を測って VO2max や運動耐容能を直接調べる検査。
- WB-MRIWhole-Body MRI
- 「全身 MRI」。被曝なしで頭から足まで広く撮影できる検査。がん早期発見への応用が議論されているが、無症状の一般人への定期検査としては、利益と害 (偽陽性・過剰診断) のバランスがまだ確立していない。
スキンケア (4)
- PAProtection Grade of UVA
- 日焼け止めの「UVA に対する強さ」を示す日本基準の表記。+ から ++++ までの 4 段階。UVA はシワ・たるみ (光老化) の主犯なので、シワ予防の観点では PA の高さが重要。
- SPFSun Protection Factor
- 日焼け止めの「UVB に対する強さ」を示す数値。SPF 30 なら、何も塗らないときに比べて UVB 量を約 1/30 に減らす。実際の効果は塗る量と塗り直しに大きく依存する。
- レチノイド
- ビタミン A 誘導体の総称。レチノール・レチナール・トレチノインなど強さの違うバリエーションがある。光老化に対して最もエビデンスの厚い局所療法とされる。
- 光老化
- 紫外線によって生じる皮膚老化。シワ・しみ・血管拡張・たるみの主因で、皮膚老化の見た目の所見の約 80% を占めるとされる。
代表的な試験 (4)
- PREDICT
- ZOE 社らが行った大規模栄養研究。同じ食事に対する血糖・脂質反応の個人差が大きいことを示し、「人によって適切な食事は違う」という個別化栄養学の根拠の一つになった。
- PREDIMED
- スペインで行われた、地中海食に関する大規模な RCT (2003〜2011)。心血管リスクの高い 7,447 人を約 4.8 年追跡し、地中海食 + EVOO/ナッツが心血管イベントを約 30% 減らすことを示した、栄養介入研究の代表例。
- TAMETargeting Aging with Metformin
- メトホルミンが「老化そのもの」を遅らせるかを、糖尿病でない高齢者 3,000 人を 6 年追跡して評価する大規模 RCT。結果が出ればパラダイムシフトとされる、現在進行中の試験。
- VITALVITamin D and OmegA-3 TriaL
- ビタミン D と オメガ 3 サプリの心血管・がん予防効果を約 26,000 人で評価した RCT。一次予防として明確な効果は示されず、サプリへの過度な期待を見直すきっかけとなった。