連続血糖測定 (CGM)
FreeStyle リブレなどの CGM (連続血糖測定) で、個人の食事と血糖反応の関係を可視化。同じ食品でも反応は人によって大きく異なることが PREDICT 研究 (Berry 2020, n=1,002) で示されています。[Berry SE 2020]
最終更新: 2026-05-09
CGM とは
CGM は、血糖の動きを自動で測り続ける小さな機械です。ここでは、それが何を測っているのかを説明します。
連続血糖測定CGMContinuous Glucose Monitoring「連続血糖測定」。皮下にセンサーを刺して数分おきに血糖を測り続ける小型デバイス (FreeStyle Libre 等)。糖尿病の管理だけでなく、健常者が「自分の食事と血糖の関係」を可視化するためにも使われる。 (Continuous Glucose Monitoring, CGM) は、皮膚の下に細いセンサーを刺し、数分おきに血糖 (正しくは皮膚の下の水分に含まれる糖の濃さ) を測り続ける仕組みです。2 週間ほどで使い切るタイプ (Abbott FreeStyle Libre など) があり、スマホでデータを見ながら 14 日連続で計れるものが広まっています。
もともとは糖尿病の管理のために作られましたが、糖尿病でない人が食事を見直したり、代謝の状態を見守ったりする使い方にも広がっています。
一物一指数の終焉 — PREDICT 研究
同じ食事でも、血糖の上がり方は人によって大きく違います。ここでは、それを大人数で確かめた研究を見ます。
Berry らが Nature Medicine (2020) に発表した PREDICTPREDICTZOE 社らが行った大規模栄養研究。同じ食事に対する血糖・脂質反応の個人差が大きいことを示し、「人によって適切な食事は違う」という個別化栄養学の根拠の一つになった。-1 研究は、CGM の使い方に大きな手がかりを示しました[Berry SE 2020]。イギリスとアメリカの健康な成人 1,002 人が、そろえた内容の食事を 2 週間くり返し食べ、その間の血糖・脂質・インスリンの反応を CGM などで測りました。
分かった主なことは次の通りです。
- 同じ食事でも、食後の血糖・脂質・インスリンの反応は人によって大きく違いました (たとえば食後の中性脂肪の反応は人による差が約 103%、血糖で 68%、インスリンで 59%)
- 生まれつきの体質 (遺伝) で説明できるのは反応のばらつきの半分以下でした。残りは、これまでの食事・睡眠・腸内細菌など環境によるものでした
- どんな腸内細菌の組み合わせを持っているかが、食後の血糖と中性脂肪の反応の予測に関係していました
- 食品そのものの性質 (糖質・食物繊維・脂質の量) よりも、人による差のほうが、反応のばらつきに大きく関わっていました
著者らは「みんなに同じ食事のすすめ方 (たとえば GI 値だけで選ぶやり方) では、一人ひとりの反応は当てられない」と論じています。これは、一人ひとりに合わせる栄養学 (個別化栄養学) を支える強い実験の 1 つです。
健常者が CGM を使う意味
ここでは、糖尿病でない人が CGM を使うと何が分かるのかを整理します。
- 「自分の血糖を上げる食事」を見つける
- 例: 同じ「玄米おにぎり」でも、ある人はほとんど反応せず、別の人は血糖が 50 mg/dL 以上跳ね上がる。
- 食べ方や順番の効果を確かめる
- 例: 同じ食事でも、先に野菜やタンパク質を食べる、酢を足す、運動のあとに食べる、などで血糖の上がり方が変わる。
- 朝の血糖と TIRTIRTime In RangeCGM データのうち、血糖値が目標範囲 (例: 70〜140 mg/dL) に収まっていた時間の割合。健常者の代謝健康度の指標としても使われ、90% 以上が目安とされる。 (Time In Range) を知る
- 糖尿病でない人でも、起きたときの血糖や TIR (たとえば 70〜140 mg/dL の範囲にいた時間の割合) は、代謝の健康度を知る手がかりになる。
- 食事のタイミングや運動の効果を見る
- 食べる時間帯を変えたとき (TRF) や、運動して 30 分後の血糖の動きなどを、その場で見られる。
健常者の血糖反応の解釈
ここでは、糖尿病でない人での血糖のおおまかな目安を示します。
| パラメータ | 目安 (健常) |
|---|---|
| 空腹時血糖 | 70〜100 mg/dL |
| 食後ピーク (1〜2 時間) | 140 mg/dL 未満 |
| 食後 3 時間で空腹時に戻る | 望ましい |
| TIR (70〜140 mg/dL) | 90% 以上 |
ただし、少し血糖が跳ねたからといって、すぐ病気というわけではありません。大事なのは、いつも同じような上がり方をくり返しているかどうかです。1〜2 回の跳ね上がりで自分を責める必要はありません。何度もくり返す反応に対して、食事や順番を変えていくのが理にかなっています。
注意点 — オーバー診断のリスク
ここでは、糖尿病でない人が CGM を使うときに気をつけたい点をまとめます。
- 健康な人にも起こる自然な血糖の上下に、気にしすぎてしまうことがある
- センサーの精度には個人差があり、貼る場所によっても誤差が大きくなることがある
- 測り直しの調整・運動・体の水分不足などで、実際より高く、あるいは低く出ることがある
- 血糖だけが代謝の健康のすべてではない (HOMA-IRHOMA-IRHomeostasis Model Assessment of Insulin Resistance「インスリンの効きにくさ」を、空腹時の血糖値とインスリン値から計算する簡便な指標。一般的に 2.0 を超えるとインスリン抵抗性ありとされることが多い。 や ApoBApoBApolipoprotein B動脈硬化を起こしうるリポタンパク (LDL・VLDL・Lp(a) 等) の表面に必ず 1 個ついているタンパク。これを測ると「動脈に詰まりうる粒子の数」が直接わかるため、LDL-C より心血管リスクの予測精度が高いとされる。 なども一緒に見る)
食事のたびに CGM のグラフを気にする状態は、食べ物への不安につながり、かえって健康的な食事から遠ざかるおそれがあります。2〜4 週間ほど集中してデータを取り、自分のパターンをつかんだら、必要な調整だけを生活に組み込む、という使い方が、お金の面でも気持ちの面でもバランスがよいでしょう。
入手と費用
ここでは、日本での手に入れ方と費用の目安を示します。
日本でも、医療機関 (糖尿病外来) を通せば処方してもらえます。糖尿病でない人向けには、自費の CGM サービスがいくつか始まっており、1 か月あたり 1〜2 万円程度が目安です。毎月続けるか、年に数週間だけ使うかは、目的しだいです。
老化のしくみへの効き方
ここでは、CGM が老化の 3 つのしくみとどうつながるかを見ます。
CGM (持続血糖測定) は、LEVEL 0 で整理した 3 つのしくみのうち、糖化への取り組みを「自分の体で確かめる」ための測定器です。AGEsAGEsAdvanced Glycation End Products / 終末糖化産物タンパク質と糖が体温の熱でゆっくり結びついて変質した物質の総称。コラーゲンに架橋を作って血管や肌を硬くしたり、RAGE 受容体を介して炎症を起こす。血糖が高い状態が長く続くと体内で作られ、こんがり焼いた料理からも摂取される。 (糖と結びついて変質した物質) がたまるかどうかは、ふだんの血糖の平均と、食後にどれくらい血糖が跳ねるかに強く左右されます。血糖のカーブが見えれば、どの食べ方・どのタイミングが自分にとって AGEs を作りやすいかを、その場で観察できます。PREDICT-1 が示したように、同じ食事でも人による差が大きいので、一般的なガイドラインより自分の血糖反応のほうが確かな手がかりになります[Berry SE 2020]。
慢性炎症と酸化にも広がります。食後に血糖が急に上がること (グルコーススパイク) は、そのたびにわずかな酸化ストレスと血管の内側の炎症を起こすことが知られています。スパイクを減らすことは、酸化ストレス と inflammaging への入力を同時に減らすことになります。CGM を見ながら食事の順番や運動のタイミングを調整できる点が、3 つのしくみへの効き方をその場で整えられる強みです。
ただし、糖尿病でない人にとって、数値を気にしすぎることは別のストレスの元にもなります。2〜4 週間だけ使って「自分の傾向」をつかみ、習慣に反映させたら外す、という使い方が現実的です。
まとめ
- 同じ食事でも食後の血糖反応は人によって大きく違うことが、PREDICT-1 で示されました[Berry SE 2020]。
- CGM は「自分に合う食べ方」を見つけるためのデータ収集の道具です。
- 糖尿病でない人でも、食事のタイミング・運動・食べる順番の効果をその場で見られます。
- 数値を気にしすぎないバランス感覚も大切です。
- 2〜4 週間だけ使うほうが、費用の面でも合うことが多いです。
関連する製品
PREDICT-1 研究 (n=1,002) で、同じ食事に対する血糖反応の個人差が極めて大きいことが示され、CGM が個別化栄養の出発点として位置づけられた。FreeStyle リブレは日本で承認済みの CGM デバイスで、糖尿病患者だけでなく、健常者の代謝把握にも応用される。
- 国内承認済みで医療機関経由でも自費でも入手可能
- 1 個で 14 日間連続測定
- スマホ単独で使える
- コストがかかる (継続的に使うには年額数万円規模)
- 装着部位の皮膚反応が出ることがある
- MRI・CT 検査前に外す必要がある
- · 本製品は専門医療機器。糖尿病治療目的での使用は医師指導下で
- · アレルギー体質の方は装着パッチで皮膚刺激が出ないか確認
References
- Berry SE, Valdes AM, Drew DA, et al. (2020). Human postprandial responses to food and potential for precision nutrition. Nature Medicine, 26(6), 964-973. doi:10.1038/s41591-020-0934-0コホート研究根拠: 中