2026-05-18
若い世代の脂肪肝 — 甘い飲み物はなぜ肝臓に脂肪をためるか、食事とサプリで何ができるか
甘い飲み物を毎日 1 L 飲むと 6 か月で肝臓の脂肪が 2 倍以上になる Maersk 2012 の RCT、思春期男子の低糖食 RCT (JAMA 2019)、地中海食で肝脂肪 −39%、体重 10% 減で 90% の人の NASH の所見が消える Vilar-Gomez 2015、クルクミンサプリの証拠と DILIN の肝障害報告まで、若い世代の MASLD (脂肪肝) を整理します。
脂肪肝とは何か — 肝臓に脂肪がたまった状態
脂肪肝とは、肝臓の細胞の 5% 以上に脂肪のつぶがたまった状態のことです。肝臓は本来、食べたものを分解したり作りかえたりして全身に送り出す「体の化学工場」です。健康なときは、ほとんど脂肪を含みません。そこに脂肪がたまり始めた段階が「脂肪肝」です。
原因による分け方 — お酒からか、それ以外か
脂肪肝は、原因によって大きく 2 つに分かれます。
- アルコール性脂肪肝: お酒をよく飲む人 (純アルコールで男性 30 g/日、女性 20 g/日以上が 1 つの目安) の肝臓に脂肪がたまったもの。
- 非アルコール性脂肪肝 (NAFLDNAFLDNon-Alcoholic Fatty Liver Disease / 非アルコール性脂肪性肝疾患お酒をほとんど飲まない人の肝臓に脂肪が溜まった状態の従来の呼び名。2023 年以降は MASLD という名称に置き換わってきているが、過去の研究では NAFLD として広く使われている。): お酒をほとんど飲まない人の脂肪肝。太りすぎ・糖尿病・脂質の異常・高血圧といった、代謝の乱れと強く関係します。2023 年以降は MASLDMASLDMetabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease / 代謝障害関連脂肪性肝疾患代謝の異常 (肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常など) と関連して肝臓に脂肪が溜まる状態の新しい呼び名。2023 年に従来の NAFLD から名称が改められた。お酒を飲まない人にも起こる脂肪肝で、進行すると肝硬変や肝がんの原因になる。 (代謝障害関連脂肪性肝疾患) という新しい名前に置きかわってきていますが、これまでの研究では NAFLD として広く扱われてきました。
この記事で扱うのは後者の NAFLD / MASLD です。若い世代で増えているのもこちらです。アルコール性の脂肪肝は、対策が「お酒を減らす」に尽きるので、別の話になります。
進み方 — 単純脂肪肝 → NASH → 硬くなる → 肝硬変
NAFLD は 1 つの状態ではなく、次の段階を踏んで進みます。
| 段階 | 状態 |
|---|---|
| 単純脂肪肝 (NAFL) | 肝臓の細胞に脂肪がたまっているだけ。炎症はわずか |
| 脂肪肝炎 (NASHNASHNon-Alcoholic Steatohepatitis / 非アルコール性脂肪肝炎NAFLD のうち、脂肪が溜まっただけでなく、炎症と肝細胞の傷みが起きた段階。放っておくと線維化が進み、肝硬変や肝がんに至る可能性がある。MASLD では MASH と呼ばれる。) | 脂肪+炎症+肝臓の細胞の傷み。肝臓が硬くなり始める段階 |
| 硬くなる (線維化) | 肝臓の組織が硬くなる。F1〜F4 で進み具合を分ける |
| 肝硬変 | 硬くなりが進み、肝臓全体が硬く小さくなる。元に戻りにくい |
| 肝がん | 肝硬変からも、肝硬変を経ずにも起こりうる |
脂肪肝と言われた人が全員、肝硬変まで進むわけではありません。多くは単純脂肪肝の段階にとどまります。ただし 20% 前後は NASH に進み、その一部が硬くなり、肝硬変に至る、というのが今の理解です。早い段階で食事・体重・運動に取り組むほど、進行を止めやすくなります。
進むかどうかの分かれ目
同じ単純脂肪肝でも、NASH に進む人とそうでない人がいます。進みやすさに関わるものとして、次が挙げられています。
- 太りすぎ (とくに内臓のまわりの脂肪)
- 2 型糖尿病・インスリンの効きの悪さ
- 脂質の異常 (中性脂肪が高い・HDL が低い)
- 高血圧
- 食事の中身 (甘い飲み物・果糖の多さ・超加工食品)
- 運動不足
- 生まれつきの体質 (PNPLA3 という遺伝子のタイプなど)
つまり脂肪肝の進み方は、「肝臓だけの病気」というより、代謝全体の状態が肝臓に映し出された結果、という見方が今どきです。
症状はほぼなく、健診で見つかるのがふつう
脂肪肝には、自分で気づく症状がほとんどありません。多くの人は、健康診断で次のどれかを指摘されて初めて気づきます。
- 肝臓の数値 (ALTALTalanine aminotransferase / アラニンアミノ転移酵素肝細胞に多く存在する酵素。肝細胞が傷つくと血液中に漏れ出るため、健康診断で肝機能の代表的な目印として使われる。脂肪肝・肝炎・薬剤性肝障害などで上昇する。GPT とも呼ばれる。 / ASTASTaspartate aminotransferase / アスパラギン酸アミノ転移酵素肝細胞や筋肉に存在する酵素で、ALT と一緒に肝機能の目印として測られる。ALT より特異度はやや低い (筋肉のダメージでも上がる) が、AST と ALT の比率は肝臓の状態を判断する手がかりになる。GOT とも呼ばれる。 / γ-GTP) の少しの上昇
- お腹のエコーで「脂肪肝」の所見
ALT が基準の上限を少し超える程度でも、原因が脂肪肝のことは多くあります。痛みも出ないので、見つかった時点で動き始めることが大事です。
もっと詳しく調べる方法
健診で脂肪肝の疑いを言われたあと、もう一段くわしく調べるときの選択肢です。
| 検査 | 何を見るか |
|---|---|
| 血液検査 (FIB-4 など) | ALT / AST / 血小板 / 年齢から、硬くなるリスクをおおよそ計算 |
| お腹のエコー | 肝臓全体の脂肪を画像で確認。健診の標準 |
| FibroScan (フィブロスキャン) | 振動で肝臓の硬さを、体を傷つけずに測る |
| MRI-PDFF | 肝臓の脂肪の量を数値 (%) でくわしく測る。研究や効果の判定で使う |
| 肝生検 | 組織を顕微鏡で見る。NASH と単純脂肪肝を分ける最終手段 |
健康な人が定期チェックとして取り入れるなら、FIB-4 (血液検査の数値から計算できる) と FibroScan が現実的です。
結論 — 甘い飲み物を減らし、体重を 5〜10% 落とし、地中海食に寄せる
脂肪肝の輪郭を押さえたところで、何をすべきかに入ります。若い世代でも増えている脂肪肝 (NAFLD / MASLD) に対して、効果が大きい順に並べると次の 3 つです。
- 甘い飲み物 (コーラ・ジュース・スポーツドリンクなど) を日常から外す
- 体重を 5〜10% 落とす (当てはまる人)
- 地中海食に寄せる (野菜・全粒の穀物・豆・魚・オリーブオイル)
甘い飲み物を 6 か月、毎日 1 L 飲むだけで、同じカロリーの牛乳や水に比べて肝臓の脂肪が 2 倍以上に増えることが Maersk 2012 の RCT で示されています[Maersk M 2012]。甘い飲み物を減らすことは、痩せている人でも、体重が変わらなくても、肝臓に直接効きます。クルクミン (ウコン) などの肝臓サポート系のサプリは、短い期間なら肝臓の数値を下げる報告がある一方、近年は肝臓を傷めた例も増えています。食事と体重の対策のうしろに置くのが無難です。
なぜ甘い飲み物が一番効くのか — 飲み物の糖は肝臓で脂肪に変わる
甘い飲み物が一番効くのには理由があります。飲み物に含まれる果糖 (フルクトース) は、口から入ったあと、ブドウ糖と違ってほぼ全部が肝臓に集まり、そこで脂肪に作りかえられるからです (この経路を de novo lipogenesis新規脂質合成de novo lipogenesis (DNL)炭水化物 (特にフルクトースや過剰なブドウ糖) から、肝臓で新しく脂肪を作る代謝経路。加糖飲料を多く摂ると、この経路が活発になり、肝臓に脂肪が溜まりやすくなる。 と呼びます)。砂糖 (ショ糖) はブドウ糖と果糖が半々で、清涼飲料水に多い高フルクトースコーンシロップは、果糖の割合がさらに高い作りです。
液体の糖は、固形の食事より吸収が速く、短い時間で大量に肝臓へ届きます。これが、同じカロリーでも甘い飲み物が脂肪肝につながりやすい、根本の理由です。
若い世代でも脂肪肝は珍しくない
脂肪肝は、昔は「中高年の生活習慣病」と思われがちでした。今は若い世代でも珍しくない状態です。
- 世界: 脂肪肝の割合は 30.05% (2016〜2019 年) に達し、1990〜2006 年の 25.26% から 50% 増と報告されています[Younossi ZM 2023]。
- 日本: 大人の 25.5% で、男性に多い傾向。2030 年に 39.3%、2040 年に 44.8% に達すると予測されています[Ito T 2021]。
- 痩せ型の脂肪肝: 日本では脂肪肝の人の約 20.7% が「痩せ型」(BMI 25 未満) で、年齢が高め、亡くなる割合は太っている群より高い、というデータもあります[Ito T 2021]。
「太っているから脂肪肝」「痩せているから安心」という単純な関係ではありません。痩せていても、食事や運動量によっては脂肪肝が起こる、という見方が今の理解です。
痩せ型の脂肪肝があるとおり、体重だけで安心したり心配したりするのではなく、甘い飲み物の量、運動量、健診の ALT / AST の動きも合わせて見ることが大事です。
甘い飲み物 — RCT で肝臓の脂肪が 2 倍以上に増えた
甘い飲み物と脂肪肝の関係で最も有名な研究の 1 つが、Maersk らが 2012 年に出した RCT です[Maersk M 2012]。太りぎみの 47 名を 4 つの群にランダムに分け、1 日 1 L の飲み物を 6 か月とってもらいました。
| 群 | 飲み物 |
|---|---|
| A | 砂糖入りコーラ |
| B | ダイエットコーラ (人工甘味料) |
| C | 牛乳 (1.5%) |
| D | 水 |
体重はどの群も大きく変わりませんでした。ところが、砂糖入りコーラの群だけ、体の中身が大きく変わりました。
- 肝臓の脂肪 +132〜143%
- 筋肉の中の脂肪 +117〜221%
- 内臓のまわりの脂肪 +24〜31%
- 中性脂肪 +32%
つまり、同じカロリーでも、甘い飲み物という形でとると、肝臓・筋肉・内臓に脂肪がたまりやすい、ということが直接示されました。甘い飲み物が脂肪肝につながる、強い証拠の 1 つです。
思春期男子で「砂糖を減らすだけ」で肝臓の脂肪が下がった
Schwimmer らが 2019 年に JAMA に出した RCT では、11〜16 歳で脂肪肝と診断された男子 40 名に、糖を全体のエネルギーの 3% 未満に抑えた食事を 8 週間出しました[Schwimmer JB 2019]。カロリーや脂質の量は、ふだんの食事と同じです。
その結果、MRI で測った肝臓の脂肪は次のように変わりました。
| 群 | 開始時 | 8 週後 |
|---|---|---|
| 低糖食の群 | 25% | 17% |
| ふつう食の群 | 21% | 20% |
調整後の群の差は −6.23%ポイント (p 値 0.001 未満)、ALT も低糖食の群で下がりました。「砂糖を減らすだけ」で、思春期の脂肪肝が短い期間で良くなる、という直接の証拠です。
甘い飲み物の量と脂肪肝のリスク — 飲むほど上がる
Chen らが 2019 年に出した 12 研究・35,705 名のまとめでは、甘い飲み物 (SSB) の量と脂肪肝のなりやすさが、次のように整理されました[Chen H 2019]。
| 甘い飲み物の量 | 脂肪肝のオッズ比 |
|---|---|
| 週 1 杯未満 | +14% |
| 週 1〜6 杯 | +26% |
| 週 7 杯以上 | +53% |
飲むほどリスクが上がる、量に応じた関係です。コーラ 1 本、エナジードリンク 1 本、果汁ジュース 1 本は、どれもこの甘い飲み物に入ります。スポーツドリンクや甘いカフェラテも、量によっては同じです。
食事 — 地中海食、体重を 5〜10% 落とす
甘い飲み物を減らすのと並んで、食事全体を整えることも大きく効きます。
地中海食で肝臓の脂肪が −39%
Ryan らが 2013 年に出したクロスオーバー RCT では、生検で脂肪肝と診断した 12 名に、地中海食を 6 週間、または低脂肪・高炭水化物の食事を 6 週間、食べてもらいました[Ryan MC 2013]。
MRS という方法で測った肝臓の脂肪は、地中海食で −39 ± 4% 下がり、比べる食事では −7 ± 3% でした。体重は変わらないまま、インスリンの効きも良くなっています。地中海食は、ただのカロリー制限ではなく、肝臓の脂肪を入れかえる方向に直接効きます。
地中海食の基本は、次のとおりです。
- 主な調理の油をオリーブオイルにする
- 野菜・果物を毎食、最低 1 品
- 豆・ナッツ・全粒の穀物を、週に何度かの土台に
- 赤身の肉は週 1〜2 回まで、魚を週 2〜3 回
- 加工食品や精製された糖を意識して減らす
くわしくは 地中海食パターンに寄せる を参照してください。
体重 5% から効き、10% で 90% の人の NASH が良くなる
Vilar-Gomez らが 2015 年に Gastroenterology に出した 52 週の研究では、NASH の 293 名 (うち前後で生検した 261 名) に生活習慣の改善を続けてもらい、体重の減り方ごとの組織の変化を整理しました[Vilar-Gomez E 2015]。
| 体重の減り | NASH が良くなった割合 | 硬くなりが良くなった割合 |
|---|---|---|
| 5% 未満 | わずか | わずか |
| 5〜7% | 約 26% | 一部 |
| 7〜10% | 約 64% | 一部 |
| 10% 以上 | 90% | 45% |
「5% 落とすだけでも始まり、10% で大半が良くなる」という関係です。極端な減量ではなく、6 か月〜1 年かけて 5〜10% を落とすことを目標にするのが現実的です。
運動も忘れずに
食事と並んで、運動 (有酸素+筋トレ) も肝臓の脂肪を下げる方向に効きます。WHO のガイドラインの目安 (中くらいの強さの有酸素を週 150 分+筋トレを週 2 日) は、脂肪肝の対策にも同じ枠組みで使えます。くわしくは 週 150 分の中強度運動 + 筋トレ週 2 回 を参照してください。
サプリ — クルクミンの「効果」と「肝臓を傷めるリスク」
肝臓のサポートで最もよく名前が挙がるのが、クルクミン (ウコンの主な成分) です。短い期間の効果は出ていますが、近年は肝臓を傷めた例も増えています。過信せずに扱うことが大事です。
短い期間なら肝臓の数値が下がる報告がある
Goodarzi らが 2019 年に出したまとめ (RCT 6 件) では、クルクミンをとると肝臓の数値が次のように下がりました[Goodarzi R 2019]。
- ALT −7.31 U/L (95% CI −13.16〜−1.47)
- AST −4.68 U/L (95% CI −8.75〜−0.60)
一定の効果はあるものの、はっきりした低下は 12 週未満の試験に限られます。長く続けても効くのか、肝臓そのもの (脂肪の量・硬さ) に効くのかは、まだ追試を待つ段階です。
「ウコンで肝臓を傷めた」例も増えている
一方で、米国の薬による肝障害を追う仕組み (DILIN) は 2023 年に、ウコン・クルクミンに関わる肝障害 10 例をまとめて報告しました[Halegoua-DeMarzio D 2023]。
- 年齢の真ん中は 56 歳、女性 8/10
- 肝臓の細胞が傷むタイプ 9 例、入院 5 例、死亡 1 例
- 起こるまでの期間は 1〜4 か月
- 10 例中 7 例で HLA-B*35:01 という、傷めやすい生まれつきのタイプを持っていた
2011 年以降の追跡で、2017 年以降に急に増える傾向があります。市販品の量が増えたことや、吸収を高めるための添加物 (ピペリン=黒胡椒の抽出物) の影響も指摘されています。日本の販売品でも、市販のウコンサプリで肝臓を傷めた例が複数報告されています。
つまり、「肝臓に良いと聞いて長く飲んだら、かえって肝臓を傷めた」という例が実際に起きています。ウコン・クルクミンを「肝臓ケア」のために、なんとなく続けるのはすすめられません。とるなら短い期間にとどめ、肝臓の数値を定期的に測ること。もともと肝臓を傷めたことがある人や、薬を飲んでいる人は、医師に相談することが前提です。
コーヒーは「飲む人ほど肝臓に良い」
サプリより、もっと身近で安全な選択肢として、無糖のコーヒーがあります。Wijarnpreecha らが 2017 年に出したまとめ (観察研究 5 件) では、コーヒーと肝臓の関係が次のように報告されています[Wijarnpreecha K 2017]。
- コーヒーを飲む人は、脂肪肝のリスクが 29% 低い (RR 0.71)
- 脂肪肝の人では、コーヒーで肝臓が硬くなるリスクが 30% 低い (RR 0.70)
観察研究なので、因果関係まで言い切れるわけではありません。ただ、別の論文でも肝硬変のリスクとの関係がくり返し報告されています。砂糖を入れない前提のコーヒーは、若い世代の肝臓ケアにも前向きに見られる飲み物です。
その他のサプリ — シリマリン・ベルベリン
シリマリン (ミルクシスル) も肝臓サポートとして知られ、まとめで ALT / AST のわずかな低下が報告されています。ベルベリンは、血糖や脂質を良くすることを通して、間接的に肝臓に効く可能性が示されています。どちらも、証拠の強さは食事と体重の対策には及ばないので、補助にとどめるのが現実的です。
注意点
- ALT / AST が大きく上がっている (基準の 2 倍以上が続く) 場合、ウイルス性の肝炎・自己免疫性の肝炎・薬による肝障害など、脂肪肝以外の原因を見分ける必要があります。自分の判断で食事だけで様子を見ず、医療機関を受診してください。
- 急な体重の減り (1 週間で数 kg) は、かえって肝臓を悪くすることがあります。6 か月で 5〜10% くらいのペースが安全です。
- 妊娠中・授乳中、持病があって薬を飲んでいる人は、新しいサプリを始める前に医師や薬剤師に相談してください。
- 甘い飲み物を人工甘味料の飲み物 (ダイエット飲料) に置きかえることの長い目で見た影響は、まだ議論が続いています。できれば水・お茶・無糖コーヒーに切りかえるのが無難です。
まとめ — まず甘い飲み物、次に体重と食事、サプリは少量・短期に
以上を整理すると、若い世代を含む脂肪肝への向き合い方は、次の順番になります。
- 甘い飲み物 (コーラ・ジュース・スポーツドリンク・甘いラテ) を日常から外す
- 体重が標準より重ければ、6 か月〜1 年で 5〜10% を目標に落とす
- 食事を地中海食に寄せる (野菜・全粒の穀物・豆・魚・オリーブオイル)
- 運動 (有酸素+筋トレ) を生活に組み込む
- 無糖コーヒーは肝臓に前向きに見られている
- クルクミンなどの肝臓サポート系サプリは、短い期間・控えめな量に。長く高い量は避ける
「サプリを 1 つ飲めば肝臓が回復する」のではありません。日々口にしている飲み物と食事を変えることが、最も証拠の厚い対策です。痩せている人でも、甘い飲み物の量や食事によっては脂肪肝が起こります。健診の ALT / AST に少しでも変化があれば、早めに動き始める価値があります。
関連トピック
補助として考えられるサプリ
くり返しになりますが、サプリは甘い飲み物・体重・食事・運動の対策が先で、その上で補助として考えるものです。長く高い量を自分の判断で使うのは避けてください。
ターメリックエキスを 95% クルクミノイドに標準化した高濃度製品。NAFLD 領域では Goodarzi 2019 のメタアナリシスで ALT/AST の短期低下が報告されているが、有意な効果は 12 週未満の試験に限られる。Halegoua-DeMarzio 2023 (DILIN) で報告された肝障害症例は、長期高用量の自己判断使用を慎重に避ける根拠となる。
- 95% クルクミノイド標準化で含有量が明確
- 第三者試験結果が公開されている信頼ブランド
- ブラックペッパー由来のピペリン非配合のため、吸収率は単独では低め
- 短期試験が中心で、長期効果は確認されていない
- · 胆道閉塞・胆石・出血傾向のある方は要医師相談
- · 肝障害の既往がある方、肝機能異常を指摘されている方は、自己判断での使用を避け医師に相談
- · 12 週を超える長期使用は肝機能を定期的に確認
- · ワルファリン等の抗凝固薬や、肝代謝の薬を服用中の方は要医師相談
- · 妊娠中・授乳中の方は使用を避ける
シリマリン (ミルクシスル) は伝統的に肝サポート系で使われ、メタアナリシスでは NAFLD 患者の ALT/AST に小さな低下が報告されている。クルクミンよりも肝障害リスクの報告は少ないが、効果の絶対量も穏やか。食事と体重の対策に対する補助的な位置づけが現実的。
- シリマリン 80% に標準化されており含有量が明確
- 比較的長い使用歴があり、安全性プロファイルが大きく崩れた報告は少ない
- 効果サイズは穏やかで、肝脂肪量そのものへの効果は未確定
- 並行輸入品のため在庫・価格が変動しやすい
- · キク科アレルギーのある方は使用を避ける
- · 妊娠中・授乳中の方は使用前に医師相談
- · 肝代謝の薬を服用中の方は要医師相談
- · ALT/AST が大きく上がっている場合、自己判断で対処せず医療機関を受診
このページで引用している論文
- Maersk M, Belza A, Stødkilde-Jørgensen H, Ringgaard S, Chabanova E, Thomsen H, Pedersen SB, Astrup A, Richelsen B (2012). Sucrose-sweetened beverages increase fat storage in the liver, muscle, and visceral fat depot: a 6-mo randomized intervention study. American Journal of Clinical Nutrition, 95(2), 283-289. doi:10.3945/ajcn.111.022533RCT (ランダム化比較試験)根拠: 高
- Schwimmer JB, Ugalde-Nicalo P, Welsh JA, Angeles JE, Cordero M, Harlow KE, Alazraki A, Durelle J, Knight-Scott J, Newton KP, Cleeton R, Knott C, Konomi J, Middleton MS, Travers C, Sirlin CB, Hernandez A, Sekkarie A, McCracken C, Vos MB (2019). Effect of a low free sugar diet vs usual diet on nonalcoholic fatty liver disease in adolescent boys: a randomized clinical trial. JAMA, 321(3), 256-265. doi:10.1001/jama.2018.20579RCT (ランダム化比較試験)根拠: 高
- Chen H, Wang J, Li Z, Lam CWK, Xiao Y, Wu Q, Zhang W (2019). Consumption of sugar-sweetened beverages has a dose-dependent effect on the risk of non-alcoholic fatty liver disease: an updated systematic review and dose-response meta-analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 16(12), 2192. doi:10.3390/ijerph16122192メタアナリシス根拠: 高
- Younossi ZM, Golabi P, Paik JM, Henry A, Van Dongen C, Henry L (2023). The global epidemiology of nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD) and nonalcoholic steatohepatitis (NASH): a systematic review. Hepatology, 77(4), 1335-1347. doi:10.1097/HEP.0000000000000004メタアナリシス根拠: 高
- Ito T, Ishigami M, Zou B, Tanaka T, Takahashi H, Kurosaki M, Maeda M, Thin KN, Tanaka K, Takahashi Y, Ogawa E, Kawanaka M, Eguchi Y, Toyoda H, Nguyen MH (2021). The epidemiology of NAFLD and lean NAFLD in Japan: a meta-analysis with individual and forecasting analysis, 1995-2040. Hepatology International, 15(2), 366-379. doi:10.1007/s12072-021-10143-4メタアナリシス根拠: 高
- Ryan MC, Itsiopoulos C, Thodis T, Ward G, Trost N, Hofferberth S, O'Dea K, Desmond PV, Johnson NA, Wilson AM (2013). The Mediterranean diet improves hepatic steatosis and insulin sensitivity in individuals with non-alcoholic fatty liver disease. Journal of Hepatology, 59(1), 138-143. doi:10.1016/j.jhep.2013.02.012RCT (ランダム化比較試験)根拠: 中
- Vilar-Gomez E, Martinez-Perez Y, Calzadilla-Bertot L, Torres-Gonzalez A, Gra-Oramas B, Gonzalez-Fabian L, Friedman SL, Diago M, Romero-Gomez M (2015). Weight loss through lifestyle modification significantly reduces features of nonalcoholic steatohepatitis. Gastroenterology, 149(2), 367-378.e5. doi:10.1053/j.gastro.2015.04.005根拠: 高
- Goodarzi R, Sabzian K, Shishehbor F, Mansoori A (2019). Does turmeric/curcumin supplementation improve serum alanine aminotransferase and aspartate aminotransferase levels in patients with nonalcoholic fatty liver disease? A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Phytotherapy Research, 33(3), 561-570. doi:10.1002/ptr.6270メタアナリシス根拠: 中
- Halegoua-DeMarzio D, Navarro V, Ahmad J, Avula B, Barnhart H, Barritt AS, Bonkovsky HL, Fontana RJ, Ghabril MS, Hoofnagle JH, Khan IA, Kleiner DE, Phillips E, Stolz A, Vuppalanchi R (2023). Liver injury associated with turmeric — a growing problem: ten cases from the Drug-Induced Liver Injury Network [DILIN]. American Journal of Medicine, 136(2), 200-206. doi:10.1016/j.amjmed.2022.09.026根拠: 中
- Wijarnpreecha K, Thongprayoon C, Ungprasert P (2017). Coffee consumption and risk of nonalcoholic fatty liver disease: a systematic review and meta-analysis. European Journal of Gastroenterology and Hepatology, 29(2), e8-e12. doi:10.1097/MEG.0000000000000776メタアナリシス根拠: 中
よくある質問
- Q. 痩せていれば脂肪肝の心配はないですか?
- A. 痩せていても脂肪肝は起こります。日本では脂肪肝の人の約 20% が「痩せ型」で、年齢が高めで、太っている人より亡くなる割合も高いことが Ito 2021 のまとめで報告されています。体重だけで安心せず、甘い飲み物の量、運動量、健診の肝臓の数値 (ALT・AST) を見ることが大事です。
- Q. 健康診断で肝臓の数値 (ALT・AST) が少し高いだけなら様子見でいいですか?
- A. 少しの上昇でも脂肪肝が原因のことが多く、甘い飲み物・体重・運動を見直す価値があります。Vilar-Gomez 2015 では、体重を 5% 落とすだけでも肝臓の脂肪は良くなり、10% 落とすと 90% の人で脂肪肝炎 (NASH) の所見が消えました。早く動くほど、肝臓が硬くなるのを避けられます。
- Q. ジュースや 100% 果汁は健康に良いのでは?
- A. 果物そのものは食物繊維とビタミンがとれてすすめられますが、果汁ジュースは果糖が多く、甘い飲み物に近い負担になります。Chen 2019 のまとめでは、甘い飲み物を週 7 杯以上飲むと脂肪肝のリスクが 53% 上がると報告されています。果物は丸ごと食べ、飲み物の甘さは水・お茶・無糖コーヒーに置き換えるのが無難です。
- Q. クルクミン (ウコン) のサプリは肝臓に良いですか?
- A. 短い期間なら肝臓の数値 (ALT・AST) を下げる報告 (Goodarzi 2019) があります。一方で 2017 年以降、米国で肝臓を傷めた例 (DILIN 報告, Halegoua-DeMarzio 2023) が増えており、自分の判断で長く高い量をとるのはすすめられません。まず食事と体重で取り組み、サプリは補助にとどめるのが安全です。
- Q. コーヒーは肝臓に悪いですか?
- A. 観察研究のまとめ (Wijarnpreecha 2017) では、むしろコーヒーを飲む人ほど脂肪肝や肝臓が硬くなるリスクが低いと報告されています。砂糖やシロップを入れない前提で、無糖コーヒーは日々の肝臓の支えとして前向きに見られている飲み物です。