ナイアシンアミド 5%
バリア機能改善・色素沈着 (シミ) 抑制・皮脂コントロール・微小なシワ改善まで、1 つで複数の皮膚老化指標に同時に効くビタミン B3 の局所成分です。Bissett 2005 の二重盲検試験で有効性が報告されています。[Bissett DL 2005]
最終更新: 2026-05-09
ナイアシンアミドとは
ナイアシンアミド (ニコチン酸アミド) は、ビタミン B3 の一種です。 細胞がエネルギーを作るときに使う補酵素 NAD+NAD+Nicotinamide Adenine Dinucleotide細胞のエネルギー代謝や DNA 修復に必須の補酵素。加齢で組織内の量が大きく低下することが分かっており、これを補うことが抗老化研究の大きなテーマになっている (NMN や NR がその前駆体)。 / NADH の、もとになる物質です。 肌に塗ると、刺激が比較的少ないのに、いくつもの働きが報告されています。 スキンケアの成分としては、幅広く使える 「優等生」 と位置づけられています。
エビデンス — 5% で何が起きたか
ナイアシンアミドの効果を調べた代表的な研究を見ます。 Bissett らによる Dermatologic Surgery 誌の研究 (2005) は、 参加者を分けて比べる、信頼性の高いタイプの試験 (RCTRCTRandomized Controlled Trial「ランダム化比較試験」。参加者をくじ引きのようにランダムに 2 つのグループに分け、片方には介入を、もう片方には介入なし (またはプラセボ) を与えて結果を比べる試験。条件をそろえやすく、「本当にその介入が効いたのか」を最も確実に確かめられる方法とされる。) です[Bissett DL 2005]。 40〜60 歳の白人女性 50 名が参加しました。 顔の片側に 5% のナイアシンアミド を、反対側にプラセボ (偽薬) を、12 週間塗りました。 同じ人の顔の左右で比べる方法です。
論文では、ナイアシンアミドを塗った側で、次の項目が はっきり改善した と報告されています。
- 小さなシミ (微小色素沈着)
- 肌の赤み
- 黄ばみ
- 細かいシワ
- 肌の弾力
著者らは、この改善について次のように論じています。ナイアシンアミドは、 肌のバリア機能を保つ、肌の細胞 (ケラチノサイト) の育ちを助ける、 うるおい成分 (セラミド) を増やす、色素の受け渡しを抑える といった、 複数の経路に働くと考えられる、としています。 皮膚の分野で、これだけ多くの面に働く成分は多くありません。 ナイアシンアミドの位置づけを固めた論文の一つです。
5% と 10% — 濃度はどう選ぶか
濃度をどう選ぶかは、よくある疑問です。 その後の研究で、5% は刺激 (かぶれ) のリスクが低く、ほとんどの人が問題なく使える ことが確認されました。 10% の製品 (例: The Ordinary "Niacinamide 10% + Zinc 1%") も広く売られています。 ただし論文の上では、5% で多くの効果が示されており、10% にはっきり上乗せの効果があるとは断定できません。 皮脂が多い、毛穴が目立つ、という悩みが主なら 10%、それ以外は 5% から始めるのが穏当です。
皮脂と毛穴への作用
ナイアシンアミドは、皮脂と毛穴にも働きます。 複数の比較試験で、2〜5% のナイアシンアミドが皮脂の分泌を抑え、 毛穴の見た目を改善すると報告されています。 皮脂腺で脂を作る酵素の働きを抑える のが、そのしくみだと考えられています。
これに加えて、皮脂の中の脂肪酸の組み合わせを変える働きもあります。 そのため、ニキビ予防 の補助としても使われます。 2 件の RCT で、4% のナイアシンアミドのゲルが、1% のクリンダマイシン (抗菌薬) のゲルと 同じくらいの効果を示したという報告もあります。ただし、研究の規模は限られています。
色素沈着 (シミ) への効き方
ナイアシンアミドは、シミにも効きます。ただし、メラニン (色素) を作ること自体を止めるわけではありません。 色素の入った小さな袋 (メラノソーム) が、作り手の細胞 (メラノサイト) から 表面の細胞 (ケラチノサイト) へ運ばれる過程を抑える ことで、シミを改善するとされます。 これは、ハイドロキノン (別のシミ対策の成分) とは違う働き方です。 そのため、併用すると効果を足し合わせられる 可能性があります。 シミが気になる人は、朝のビタミン C と夜のレチノイドに加えて、検討する価値があります。
バリア機能 — 敏感肌・酒さでも使いやすい
ナイアシンアミドは、肌の防御 (バリア) を助ける成分でもあります。 うるおい成分 (セラミド) を増やし、肌から水分が逃げる量 (経皮水分蒸散量: TEWL) を下げることが、 複数の小規模な試験で報告されています。 そのため、敏感肌・乾燥肌・酒さ (rosacea) のような、 バリアが弱った状態でも比較的使いやすい成分です。
実践プロトコル
使うときのポイントをまとめます。
- 濃度: たいていの目的は 5% で十分です。皮脂・毛穴・ニキビが目的なら 10% を検討します。
- タイミング: 朝でも夜でも使えます。レチノイドと併用するなら、刺激をやわらげる目的で 夜のレチノイドの前 に塗ると便利です。
- 重ねる順番: 化粧水のあと、美容液の層の早めに塗ります。
- ビタミン C との併用: 「相性が悪い」という古い説は、最近の検討では支持されていません。 気になる場合は、朝にビタミン C、夜にナイアシンアミド という組み合わせにします。
注意点
- ナイアシンアミドが分解してできる ニコチン酸 (ナイアシン) が、まれに混ざっていることがあります。 これは血管を広げて、顔のほてり (フラッシング) を起こすことがあります。質のよい製品は、精製の度合いが高いです。
- まれに、アレルギーの反応 (接触皮膚炎) が起きます。パッチテスト を勧めます。
- 飲むタイプの高い量 (1 日 1.5 g 超) では別の議論がありますが、肌に塗る話とは別です。
老化のしくみへの効き方
ナイアシンアミドが老化に効くしくみを、LEVEL 0 で整理した 3 つのしくみ (酸化・糖化・慢性炎症) に沿って見ます。汎用性の高い成分で、3 つすべてに穏やかに効きます。いちばんはっきりしているのは、慢性炎症との関わりです。赤み (小さな炎症) を抑えながら、バリア機能を補います。すると、外からの刺激による肌の炎症が減ります。肌の inflammaging を抑える方向に働きます。
酸化と糖化にも広がります。ナイアシンアミドは NAD+NAD+Nicotinamide Adenine Dinucleotide細胞のエネルギー代謝や DNA 修復に必須の補酵素。加齢で組織内の量が大きく低下することが分かっており、これを補うことが抗老化研究の大きなテーマになっている (NMN や NR がその前駆体)。 / NADPH のもとになる成分です。そのため、細胞の中の抗酸化のしくみ (グルタチオンの維持など) を支え、酸化ストレス への耐性を間接的に高めます。さらに、AGEsAGEsAdvanced Glycation End Products / 終末糖化産物タンパク質と糖が体温の熱でゆっくり結びついて変質した物質の総称。コラーゲンに架橋を作って血管や肌を硬くしたり、RAGE 受容体を介して炎症を起こす。血糖が高い状態が長く続くと体内で作られ、こんがり焼いた料理からも摂取される。 ができるのを一部抑える働きが、試験管の実験 (in vitro) で報告されています。肌の AGEs 対策にも、穏やかに関わる可能性があります。
「シミ・シワ・赤み・皮脂・バリア」という複数の悩みに同時に効きます。これは、3 つのしくみに横断的に働く成分の性質に裏づけられています。
まとめ
- 5% のナイアシンアミドは、色素沈着・赤み・黄ばみ・細かいシワ・弾力 を改善した RCT があります[Bissett DL 2005]。
- 効くしくみは、バリア機能の改善・色素の運搬を抑える・皮脂を抑える など、多面的です。
- 刺激が少なく、敏感肌でも使いやすいです。
- レチノイド・ビタミン C と組み合わせやすい「ハブ」成分です。
関連する製品
ナイアシンアミド 5% の効果は複数 RCT で示され、10% は皮脂分泌過多向け。製品自体の独立 RCT はない。
- 極めて低価格
- 成分濃度が明示されている
- 刺激が比較的少ない
- 10% は人によって赤み・刺激の報告あり
- ビタミン C と同時使用で稀に紅潮
ナイアシンアミド配合の医薬部外品で、シワ改善と美白の効能効果が承認されている。OTC 化粧品の The Ordinary 10% などとは異なり、有効成分濃度はメーカー非公開。Bissett 2005 等のナイアシンアミドの皮膚老化改善エビデンスを背景に持つ製剤。
- 医薬部外品で、シワ改善・美白の効能効果が法的に明記されている
- 国内大手通販で入手しやすく安定供給
- ナイアシンアミドの効果検証の出発点として扱いやすい
- 医薬部外品のため有効成分の具体的な濃度は非公開
- OTC 化粧品の高濃度製品 (10% 以上) と直接比較しにくい
- · 肌に異常がある場合は使用しない
- · 敏感肌の方は使用前にパッチテストを推奨
ナイアシンアミドを有効成分とする医薬部外品の乳液。バリア補強目的のセラミドを併用しているため、レチノイドなど刺激の強い成分を併用する人のスキンケアステップに組み込みやすい。本製品の独立 RCT はないが、ナイアシンアミドの皮膚老化改善の成分エビデンス (Bissett 2005 等) を背景に持つ。
- 医薬部外品で、シワ改善・美白の効能効果が法的に明記されている
- セラミド配合で、レチノイドなど刺激成分を使う日のバリア補強に向く
- 敏感肌向け処方で、低刺激を訴求
- 医薬部外品のため有効成分の具体的な濃度は非公開
- 100 mL ボトルで、使い切るまで一定の期間が必要
- · 肌に異常がある場合は使用しない
- · 敏感肌の方は使用前にパッチテストを推奨
References
- Bissett DL, Oblong JE, Berge CA (2005). Niacinamide: A B vitamin that improves aging facial skin appearance. Dermatologic Surgery, 31(7 Pt 2), 860-865. doi:10.1111/j.1524-4725.2005.31732RCT (ランダム化比較試験)根拠: 中