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レジスタンストレーニング (週 2〜3 回)

サルコペニア予防、骨密度維持、インスリン感受性改善に効く筋トレ。Fiatarone 1990 では平均 90 歳の高齢者で 1RM 80% の高強度筋トレが筋力 174% 増加・歩行速度 48% 改善を示しています。[Fiatarone MA 1990]

最終更新: 2026-05-09

床に置かれたダンベル
Photo by Samuel Girven on Unsplash

なぜ筋トレが健康寿命戦略の中心なのか

年をとると、誰にでも起きる変化の 1 つが、筋肉の減少です。これを サルコペニアサルコペニア加齢に伴って筋肉量と筋力が減っていく現象。30 歳以降、対策しないと年に 1〜2% の筋量が失われるとされる。転倒・骨折・寝たきりの原因になり、レジスタンストレーニング (筋トレ) で予防できる。 (筋肉の量と力が落ちること) と呼びます。何もしないと、30 歳を過ぎてから筋肉は年に 1〜2% 減っていきます。60 歳までに、筋力が 30% 以上落ちることもあります。サルコペニアは、転倒・骨折・寝たきりのリスクを大きく上げ、全死亡リスクとも別々に関係します。

筋トレ (レジスタンストレーニング) は、このサルコペニアを直接防ぎ、治せる唯一の方法です。あわせて、骨密度の維持、インスリンの効きの改善、基礎代謝の維持にも関わる、効果の大きい習慣です。

90 代でも筋肉は育つ — 古典的 RCT

このセクションは、とても高齢でも筋肉が育つことを示した有名な試験の話です。Fiatarone らが JAMA (1990 年) に報告しました[Fiatarone MA 1990]。介護施設で暮らす超高齢者 10 名 (平均 90 歳、上は 96 歳まで) に、強めの筋トレをしてもらいました。強さは 1 回だけ持ち上げられる重さ (1RM1RMOne-Repetition Maximumある種目で「1 回だけ持ち上げられる最大重量」。筋トレの強度を表す基準として、〇% 1RM のように使われる。) の 80%、週 3 回、8 週間です。

わずか 8 週間で、次の大きな変化が報告されました。

  • 筋力が平均 174% 増えた (最後までやりきった 9 名で)
  • つま先とかかとを一直線に並べて歩く速さ (タンデム歩行) が 48% 速くなった
  • 太ももの中ほどの筋肉の断面積が約 9% 増えた (CT で計測)

著者らは「高齢者の機能低下の少なくとも一部は、元に戻せないものではなく、適切な負荷で回復できる」と述べています。これは「年齢を理由に筋トレを諦めない」という、今の高齢者運動医学の出発点になった研究です。

その後の多くの RCT やメタアナリシスでも、70 代・80 代でも筋肉が育つ反応が起こることが、繰り返し確かめられています。

何をどれだけやるか

ここからは、実際にどのくらいやればよいかの目安です。世界保健機関 (WHO) の指針は「週 2 日以上、体の主な筋肉すべてを対象に」ですが、これは最低ラインです。効果を最大にするには、週 2〜3 回・1 回 30〜60 分、1RM1RMOne-Repetition Maximumある種目で「1 回だけ持ち上げられる最大重量」。筋トレの強度を表す基準として、〇% 1RM のように使われる。 の 70〜85% の強さが目安です。

メタアナリシスからは、筋肉を大きくするのに次の要素が大切とされます。

  • 十分な負荷 (あと数回で限界という手前まで追い込む)
  • 総セット数: 主な筋肉ごとに週 10〜20 セット
  • 少しずつ増やす (だんだん重さや回数を上げる)
  • 十分なタンパク質 (体重 1 kg あたり 1 日 1.2〜1.6 g)
  • 休息 (同じ筋肉は 48 時間以上あける)

自宅か、ジムか

「ジムに行かないと筋肉は大きくならない」というのは誤りです。自分の体重、チューブ、ダンベルでも、負荷を少しずつ上げれば筋肉は育ちます。たとえば、ハーフスクワット → ブルガリアンスクワット → ピストルスクワットのように動作を難しくしていけば、自分の体重だけでも負荷を上げ続けられます。

ただし、筋肉がある程度ついてくると、自分の体重だけでは負荷を増やしにくくなります。そのころには、ダンベルやジムの機材が必要になります。

高齢者に勧める種目

転倒を防ぎ、日常の動作を保つ観点で、優先したい種目は次の通りです。

  1. スクワット系 (椅子からの立ち上がりでも代用できる)
  2. デッドリフト系 (床から物を持ち上げる動作)
  3. プルダウン / ローイング系 (引く動作)
  4. プッシュアップ系 (押す動作)
  5. コア (プランク・デッドバグ)

注意点

筋トレを始める前後で、気をつけたいことです。

  • 持病がある場合は、整形外科や循環器内科で診てもらってから始める
  • 強さを急に上げると怪我につながる。まずは正しいフォームを覚え、痛みが出たら一段階下げる
  • タンパク質が足りないと、筋肉は育ちにくい。植物性でもよいが、動物性のほうが筋肉を作る効率は高い
  • ボディビルのように「限界まで追い込む」必要はない。長く続けられる強さと頻度が、最も効果を生む

老化のしくみへの効き方

筋トレの効き方を、LEVEL 0 で整理した 3 つのしくみに当てはめます。筋トレは、糖化と慢性炎症の両方に大きく効きます。糖化に効くのは、筋肉が血液中のブドウ糖を最も多く取り込む場所だからです。筋肉が増えるとインスリンが効きやすくなり、食後の血糖の上がり方がゆるやかになります。その結果、AGEs のたまり方が穏やかに抑えられます。

慢性炎症との関わりは、縮む筋肉から出る マイオカインマイオカインmyokines / 筋由来サイトカイン運動している筋肉から血液中に出されるシグナル物質の総称。免疫・代謝・脳の働きに影響し、運動の効果が全身に広がる橋渡しを担う。 (筋肉が出すホルモンのような物質) によって生まれます。たとえば IL-6 は、筋肉から出るときは炎症を抑える方向に働くと考えられています。規則的に筋トレを続けている人ほど、CRP や IL-6 の慢性的な値が低い傾向が観察されています。これが inflammaging を下げる方向に働きます[Franceschi C 2018]

酸化にも効きます。運動中は一時的に活性酸素 (ROS) が出ますが、それが繰り返されることで、体の抗酸化のしくみが鍛えられます。これをホルメシスと呼びます。長い目で見ると、酸化ストレス への強さが上がります。サルコペニアサルコペニア加齢に伴って筋肉量と筋力が減っていく現象。30 歳以降、対策しないと年に 1〜2% の筋量が失われるとされる。転倒・骨折・寝たきりの原因になり、レジスタンストレーニング (筋トレ) で予防できる。 を防ぐだけでなく、3 つのしくみすべての改善に効きます。これが、筋トレが「中年以降の運動の中心」と言われる理由です。

まとめ

  • 強めの筋トレは、90 代でも筋力を 174% 改善した RCT があります[Fiatarone MA 1990]
  • WHO の指針は、週 2 日以上、主な筋肉を対象にした筋トレを勧めています[Bull FC 2020]
  • 自分の体重から始め、少しずつ負荷を上げます。
  • タンパク質、休息、続けることが、効果を左右します。

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Fiatarone 1990 (JAMA) の RCT は、平均 90 歳の高齢者で 1RM の 80% 強度の高強度筋トレを 8 週間行い、筋力 174% 増加・歩行速度 48% 改善を示した。可変式ダンベルは同じ重量でも徐々に強度を上げる『漸進的過負荷』を自宅で実現できる代表的な道具。

利点
  • 1 セットで広い重量範囲をカバーし、漸進的過負荷を実現できる
  • 省スペース (固定式ダンベルの一揃えより小さい)
  • ダイヤル式で重量変更が早い
懸念点
  • 落下時の故障リスクがあり、扱いに慣れが必要
  • 重量を上げるほど価格が上がる
注意事項
  • · 床への衝撃と落下に注意 (ダンベルは滑り止めマット推奨)
  • · 高血圧や心血管疾患のある方は開始前に医師に相談
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References

  1. Fiatarone MA, Marks EC, Ryan ND, Meredith CN, Lipsitz LA, Evans WJ (1990). High-intensity strength training in nonagenarians: effects on skeletal muscle. JAMA, 263(22), 3029-3034. doi:10.1001/jama.1990.03440220053029
    RCT (ランダム化比較試験)根拠:

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